マンション改修レポート① 「 みどりの行方 」

マンション屋上緑化改修事例

株式会社改修設計 設計監理部 小林 実

 

調査で訪れたマンションのルーフバルコニーの先に、成長した多数のヒバやツツジ等が見える。

近年、行政ではヒートアイランド現象の緩和、建物の省エネルギーの観点から屋上緑化を推進している。

しかしマンションにおける屋上緑化の維持保全は簡単ではない。

それは防水改修を検討するときに顕在化する。

今回の大規模修繕工事を計画するにあたり、組合と検討を重ねたのは、この屋上緑化についてだった。

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建物調査の段階で屋上防水からの漏水が確認された。

屋上防水を改修するためには、屋上緑化を一旦、全て撤去する必要があった。

改修後、屋上緑化を復旧するか。

復旧するのに必要なコストを試算したが低い金額ではなかった。

行政に屋上緑化の復旧について問い合わせをしたところ、所有者で判断して問題ないとの回答を得た。

(各自治体や物件の事情等によっては復旧が必要な場合もあります。)

数回にわたり理事会、専門委員会と検討を重ねた。

コストについては、今回の工事費だけではなく、今後25年間のランニングコストについても検討した。

ただ、みどりについては工事費だけでは判断できない要素がある。

みどりが生活に潤いや癒しを与えてくれると考える方々もいる。

建物の意匠への影響や、居室からの風景についても、どのように変化するか説明会を開き、組合員の意見を聞いた。

また、復旧しない場合については、それまで緑化が果たしていた機能を補完する必要がある。

今回の場合は、「断熱性能の確保」と「隣地マンションとの目隠し」であった。

そういったことについてもひとつひとつ検討を進めていった。

最終的に組合は、マンション全体の利益を考え屋上緑化については復旧をしないことを選択した。

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都心のマンションでは、敷地に余裕がなく、外構に十分な緑化面積がとれない場合が多い。

緑化された屋上の改修工事は今後、マンションの維持保全における課題のひとつである。

みどりをどうするか。

それには風景、意匠、省エネ効果、費用など様々な要素を、マンション全体の住環境として捉えていくことが必要である。

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改修前

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改修後

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改修前

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改修後