受水槽の再生
RC造受水槽 内部FRP樹脂コーティング
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マンション概要
- H団地管理組合
- 所在地:千葉県
- 竣工年:1980年
- 建 物:14棟 5階建 総戸数360戸
- 工事概要
- 検討期間:2004年4月~6月
- 工事期間:2004年7月~2004年10月(3ヵ月)
- 資金調達:修繕積立金のみ
- 全体の工事費:約900万円
- 組合の工事体制:理事会+修繕委員会
- 設計事務所:株式会社改修設計(テクノサポートネット:改修設計グループ)
工事のきっかけ・工事内容
建物に附随して作られた鉄筋コンクリート製の受水槽の劣化が進んでいたために修繕の検討をはじめました。施工会社からいろいろな提案がされましたが管理組合だけでは判断できず、設計事務所に相談しました。
新しい受水槽を設置することも検討しましたが、適切な場所がなく、現在の受水槽を修繕して使うことにしました。「防水材料から有害な環境ホルモンが溶け出すようなことがないこと」と「仮設の受水槽が不要で短期間で工事できること」を重視して工法を選びました。
①工事前(水を抜いた状態)亀裂と錆が顕著に見える 既存防水材の臭気も… | ![]() |
②工事中 亀裂に樹脂を注入し補修 | ![]() |
③工事中 一層目 FRP製シートをアンカーピンで固定 | ![]() |
④工事中 二層目 ガラス繊維+樹脂の塗布 | ![]() |
⑤工事中 三層目 樹脂の乾燥で一体化したFRP | ![]() |
⑥完成 防水材料のFRPでコートしたところ | ![]() |
⑦完成 通気孔、給水口周辺 | ![]() |
解説
鉄筋コンクリート部分の亀裂や錆を補修し、内部の6面をFRP樹脂(強化プラスティック)でコートしました。コンクリートに樹脂を塗るには下地を十 分乾燥させなければなりませんが、地下受水槽で、2槽のうち1槽を使用しているため困難でした。そこで、第1層目にシート状のFRP樹脂を用いアンカーピ ンで固定することとしました。
受水槽の施工・乾燥後すぐに清掃・消毒を行い、注水して試験体採取をし、検査結果で安全を確認して一度水を抜き、新たに注水してから各住戸に給水を行いました。
管理組合から一言
工事前に受水槽から水を抜いて内部を見たところ、壁に錆や亀裂が見えたうえ、臭気が漂い、「20数年間、ここの水を飲んでいたのか」と非常に複雑な思いでした。
工事が終わった段階で理事会の皆さんと受水槽内部を見学しましたが、内面が一体で、清掃もしやすそうなことが見ただけで解かりました。これから安心して蛇口からの水が飲めると実感しました。
専門家から一言(プロのアドバイス)
鉄筋コンクリート製の受水槽の修繕工法には、イニシャルコストのみを比較すると安価なものもあります。しかし、耐用年数などを総合的に考慮するとFRPは優れています。FRP樹脂を補完する工夫により信頼性が高く短期間で受水槽の再生ができました。